コラム

デジタルマーケティングにおけるSEOやグロースハックの重要性 - 博報堂アイ・スタジオ

作成者: 藤本貴章|5/9/23 10:38 AM

「ググれ」という言葉が一般化するほど、検索エンジンは今の私たちの生活に浸透しています。その隆盛により、デジタルマーケティングも進化を進めてきました。 AISASというマーケティングのフレームワークもありますね。

つまり、各種のメディアによって認知(Attention)したユーザーが興味(Interest)をもち、検索行動(Search)によって比較検討をし、購入(Action)後にシェア(Share)する、という一連の流れです。

このAISASのフレームワークでも代表されるように、現代の生活者の購買行動において、Search(検索)は欠かせないものになっています。

そこで、デジタルマーケティング界隈では、購買の直前のファネルである検索行動でいかに露出するか?ということが長く非常に重要視されてきました。

こうした検索行動をする生活者をマーケティング対象にとらえ、そのマーケットにコンテンツを最適化していくマーケティングはSEM(Search Engine Marketing)と呼ばれます。

SEMでは、GoogleやYahoo!の検索結果がデジタルマーケティングの主戦場です。

そこで、自サイトを特定の検索語で上位表示させたり、できるだけ多くの検索語でヒットするように最適化したりするようになります。これがいわゆるSEO(Search Engine Optimization)です。

さらに、SEOだけでなく、特定の検索語で自サイトを上位表示させる「リスティング広告(≒PPC)」というものが生まれました。SEOと違い上位表示を確実にできるメリットがありますが、クリックごとに広告費を検索エンジンに支払う必要があり、それなりのコストが変動費としてかかるのがデメリットです。

うまく最適化できれば、コストをかけずにサイト流入を実現できるSEOは非常に重宝され、2010年ころは広告宣伝系の展示会でもSEOに関する出典がかなりの数があったものです。

Googleの進化とリターゲティング広告の隆盛

しかしデジタルマーケティングが進化していくなかで、SEOへの注目は徐々に落ちてきています。

要因の一つはGoogleの検索アルゴリズムの進化です。以前はGoogleの検索アルゴリズムはシンプルなもので、狙った検索語を上位表示させるのはそれほど難しくありませんでした。そのため費用対効果の算出は用意で、その効果も今に比べると非常に優れていました。

今ではGoogleのアルゴリズムは複雑に進化した、ため特定の検索語で確実に上位表示させることでは簡単ではなくなりました。ユーザーの検索意図の理解やそれに対応したコンテンツが充実しているか、はたまたユーザー視点で使いやすいサイトになっているか、といった定性的な観点が上位表示に影響するようになってきています。

一方、新たな広告メディアとして「リターゲティング広告(リマーケティング広告)」が隆盛してきます。

みなさまも、「あれ、このサイトの広告、こないだ調べたサービスのものが表示されてるな、追いかけられてるな」という感覚を覚えたこともあるのではないかと思います。こうした、特定のサイトのアクセス履歴を第三者のサーバーで蓄積し、その情報をもとに別のサイトでも広告を表示するのが「リターゲティング広告」です。

これは強力です。なぜなら、それまでのディスプレイ広告と違い、「自分で興味をもって一度調べたサービス」の広告が出てくるのです。

こうした仕組みはWEBサイトのバナーエリアのみならず、Youtube広告やGmail等さまざまなメディアでも使用されており、ネット広告業界で大きく市場が成長しました。

リスティング広告でサイト流入を促し、サイトに訪れたユーザーの情報を獲得し、そのユーザーにリターゲティングを行う、という一つの勝ちパターンができたのです。

こうして、相対的にSEOへの注目度は落ちていました。

リターゲティング広告の危機

しかし、リターゲティング広告の状況も変わりつつあります。リターゲティング広告を実現させている技術(3rd party Cookie)の使用に制限がかかることが明確になったためです。

欧州や米国で個人情報保護の機運が高まったためです。Facebookがユーザーに無断で個人データをマネタイズしている、といった批判などが有名ですね。個人情報保護に関する新たな規則(EUではGDPR、米国カリフォルニア州ではCCPA)も定められました。

こうした背景もあり、AppleはITP(Intelligentl Tracking Protection)という仕組みを導入し、ユーザーのアクセス情報を第三者のデータベースに送信することを防ぐようにしています。Googleが提供しているブラウザ「Chrome」でも、3rd Party Cookie の利用廃止を宣言しました。

そうなると、3rd party Cookie の使用を前提としているリターゲティング広告は実現自体が難しくなります。そこで、きたる 3rd Party Cookie の廃止や ITP の対策としてネット広告業界では新たな技術の開発も盛んに行われるようになりました。

しかし個人情報保護のトレンドとGoogleやAppleの技術力を考慮すると、3rd Party Cookie に代わりリターゲティング広告を安定的に実現する技術を確立するのは難しいと言えるでしょう。

「他からもらうデータ」から、「自社で獲得するデータ」が重要に

こうしてリターゲティング広告が難しくなると、デジタルマーケティングの軸足も別の手段に移ります。

近年、ユーザーにIDを発行し、「ログイン(サインイン)」を求めるサービスが増えてきている実感がある方もいらっしゃるかと思います。 一度ユーザーが「ログイン」すると、その後はWEBサイトやアプリ、実店舗でのID提示による購買行動など、WEBに完結せず顧客の購買行動のさまざまな接点で統合的な情報を獲得できるようになりました。

それまではWEBサイトの中だけで離脱ページを改修したり申し込みフォームを改善したりしていたものが、WEBだけでなくアプリやメール、実店舗での体験など、大きなマーケティングファネルの枠組みの中での最適化が可能になったのです。それを実現するのがCDP(Customer Data Platform)と呼ばれる仕組み。

各顧客接点での情報を集め、統合するのがCDPです。CDPに統合されたデータは、Push配信ツールに連携すればセグメントを切ったうえでPush通知ができるようになり、MAに連携すればコミュニケーションを自動化でき、BIやBAに連携すれば経営判断に役立てることもできます。BtoBでもBtoCでも、このCDPを活用して生活者の購買体験を最適化していくことが当然のようになってきているのです。

こうして、顧客IDの発行、CDPの一般化によって、WEB上での体験だけでなく顧客体験全体でのPDCAサイクルを改善できるようになりました。

それによって、これまでWEBの空間で完結していたグロースハックが加速します。SEOで無料で流入を増やし、グロースハックで確実にIDを獲得し、MAやBIを活用してサービス全体を改善していく。

これが現在のデジタルマーケティングの主流になっています。

なにかしらサービスでアカウントを作る際は「利用規約に同意」していると思いますが、それを根拠に正々堂々とデータを活用、収集することができるCDPベースでのデジタルマーケティングは、リターゲティングが難しくなる業界トレンドのなかでも重要視され続けることでしょう。

 

 

弊社、博報堂アイ・スタジオは、博報堂グループでデジタル系の高度な制作業務を一手に担い、大企業のデジタルマーケティングの戦略策定から実行支援、その仕組を支えるシステムの開発などを行っておりました。

そうした業務を経て、幸いにしてデジタルトランスフォーメーションに必要なノウハウを持ち合わせております。初回相談は無料ですのでまずはお気軽にお問合せください。