BtoB企業のマーケティング組織立ち上げにあたり、組織形態や外部委託の有無、集める人材など決定すべき項目は山積みです。そこで今回は、マーケティング組織の業務や重要性を改めて理解したうえで、組織設計において必要な人材、目的に応じた組織形態から時期別の立ち上げ事例までを網羅的に解説します。多くのマーケターが悩みがちなマーケティング組織の作り方のポイントをまとめていますので、まずはこの記事で全体像を掴むところからはじめてください。
マーケティング組織とは
マーケティング組織とは、広報宣伝活動、販売促進、市場シェアの拡大、ブランド構築など、BtoBにおける顧客接点(タッチポイント)の中心となる存在です。潜在顧客の需要リサーチや自社製品のプロモーション、リード(見込み顧客)獲得、購買意欲向上のための施策展開が主な業務です。さまざまな商品や情報があふれる現代では、売上拡大や競争力アップのため、多くの企業で「有能なマーケティング組織をいかに編成するか」が課題となっています。
BtoBにおけるマーケティング組織の重要性
ビジネスプラットフォームのDXが進む現在では、企業活動の多くがオンライン化しました。そのためBtoBでも、従来のマーケティング活動に加え、ビッグデータやAIなどテクノロジーを駆使したWebマーケティングやデジタルマーケティングが主流になりつつあります。このようなマーケティング活動の変化に対応するために、専門性の高いマーケティング組織は企業にとって重要な役割をもちます。
- 多様化するニーズに対応し、顧客満足度を高める
消費者のニーズや購買プロセスの複雑化・多様化に対応するためには、マーケティング組織による情報収集やデータ分析が欠かせません。また、組織全体で一貫したアプローチを実践することで、顧客満足度を高めやすくなります。 - 市場環境の変化に対応し、競争力を高める
動向やトレンドをいち早く把握するためにも、マーケティング組織による専門的なデジタルマーケティングのスキルや技術が役立ちます。 - マーケティング活動によるROIの向上
社内リソースを最大限活用するため、マーケティングによるROI(費用対効果)の向上を急務としている企業も少なくありません。マーケティング組織は各オペレーションごとにKPIを定めやすいため、効果測定やPDCAサイクル構築、戦略の最適化をスムーズにすすめることができます。
BtoBマーケティングの主な業務
まずはマーケティング部門の業務と役割を把握するために、ここではBtoBマーケティング組織の主な業務を4つご紹介します。
- マーケティング戦略の策定
マーケティング組織は、企業の目標や方針に基づき戦略立案を行います。KGI・KPI設定、ペルソナ設定やカスタマージャーニー作成、コミュニケーション設計など、全体の方向性を決める役割をもちます。 - マーケティング施策の実施
広告やイベント、展示会、メルマガ、SNSなど、さまざまなプロモーションのプランニングから実施までを一貫して担当します。オウンドメディアやLPなど、Webコンテンツ制作にともなうライティングやデザイン・コーディング、配信までのタスクも業務範囲です。 - 分析と改善
マーケティング活動の成果の効果検証や、分析・評価も重要な役割です。組織全体のPDCAサイクルを構築し、業務効率化や課題解決に向けて改善を続けます。 - マネジメント
組織内のマネジメントも大切な役割です。人的リソースや予算の調達、事業推進、部門間の調整、オペレーション管理をメインに行います。
マーケティング組織に関わるメンバー
マーケティング組織では専門性の高い業務が多く、多様な人材が役割分担をしながらオペレーションを遂行します。なお、マーケティング組織の編成のために必要な人材やチーム体制は、事業内容や企業規模などでは変わってくるため、ここでは一般的なメンバーについて紹介します。
メンバー | 役割 |
マネージャー | マーケティング組織の責任者で、リーダーとして全体の管理を担当 |
プランナー | マーケターとして、戦略立案や施策プランニング |
ディレクター | プロモーションやコンテンツなど、実施する施策の進行管理 |
オペレーター | プロジェクトの業務フロー作成などオペレーティング業務 |
デザイナー | コンテンツデザインを担当 |
コーダー | WEBコンテンツのコーディングを担当 |
ライター | コンテンツにおける文章執筆を担当 |
アナリスト | マーケティング活動全般のデータ収集や分析、WEB解析などを担当 |
マーケティング組織に関わる外部パートナー
マーケティング活動は多岐にわたり、すべてを社内人材で内製化するのは現実的ではありません。ノウハウやスキル面を考慮して、外部委託可能な専門家やアウトソーシングサービスの活用を検討してください。
パートナー | 役割 |
コンサルティング会社 | 戦略立案代行や、施策へのアドバイスなど |
広告代理店 | コンテンツ制作やプロモーション施策の実施代行 |
制作会社 | コンテンツ制作代行 |
PR会社 | 広報やPR業務の代行 |
イベント会社 | イベント等の運営代行 |
印刷会社 | 印刷業務の代行 |
広告代理店 | コンテンツ制作やプロモーション施策の実施代行 |
マーケティング組織の3つの形態
マーケティング組織の立ち上げでは、目的に応じた形態を選択することが大切です。ここでは代表的な3パターンをご紹介します。
- 部門並列型
営業や人事、経理などの他部門から「独立した部門」としてマーケティング組織を編成します。社内に点在していたマーケティング人材を1部門に集約するため、プロモーションや販促活動の継続的運用に有効な形態です。 - 企画室型
マーケティング組織を、機動的なCEOや経営陣直轄のチームとして編成する形態です。各部門の上位組織として、組織的マーケティング能力(ケイパビリティ)の向上や、自社課題の解決を図ります。 - プロジェクト型
「社内横断プロジェクト」として各事業部が連携・兼務してマーケティングに取り組む形態です。マーケティング組織がまだ未熟な場合や、期間限定のプロモーションなど、一時的なコンテンツマーケティングに有効です。
時期別のマーケティング組織立ち上げ事例
マーケティング組織の体制は、企業規模やビジネスのフェーズによって最適解が異なります。ここでは、マーケティング組織の立ち上げ期と軌道に乗ってからの運用事例を2つご紹介します。
- 立ち上げ期
マーケティング組織の立ち上げ期に、プランニングと施策をコンパクトに実施した事例です。立ち上げ期は、2〜3人ほどの少数精鋭チームであることが大半です。施策の進行管理やプランニングなどマネージャーが役割の広範囲を担い、あとはディレクター1名、オペレーター1名で運用します。広告運用やコンテンツ制作はアウトソーシングの活用が中心です。 - 立ち上げから数年後
立ち上げから数年たち、分業体制をつくり組織的に動いた事例です。運用が軌道に乗ってきたら5〜6人の分業体制に移行します。兼務していたマネージャー、プランナー、ディレクターを分け、マネージャーは組織マネジメントに専念する段階です。プランナーを中心に施策立案を行い、ディレクターとオペレータで実行する連携体制を確立します。
営業がマーケティングを兼務する弊害
マーケティング組織が未熟な企業では、専任のマーケティング担当者をおかず、営業部門やインサイドセールスが兼任していることがあります。しかし、市場全体の分析を行うマーケティングと、個別ユーザーへの商談に重点をおく営業ではそもそも考え方も扱う領域も異なるため、失敗に終わるケースが少なくありません。無理な兼務は営業のパフォーマンス低下に直結するため、営業部門とは別にきちんとマーケティング組織を立ち上げることが大切です。
マーケティング組織が正しく機能するために
マーケティング組織が正しく機能するには、マーケティングと営業が密に連携することが重要です。しかし、両部署はゴールや視点、立場が異なるため、そのままではスムーズな情報共有もままなりません。まずは会社全体でペルソナやカスタマーサクセスについての共通認識を確立し、部門同士の協力体制を構築するところから始めてください。
BtoB事業に最適なマーケティング組織を作るには
顧客獲得から育成までをフォローするマーケティング組織は、関与する意思決定者が多く検討期間も長いBtoBにとってなくてはならないチームです。企業ポリシーや業界によって最適なマーケティング組織は異なるため、自社に合った体制づくりの取り組みが必要です。もしBtoBマーケティング組織を立ち上げたばかりで何から始めたらいいか分からないなどお困りの方は、弊社株式会社博報堂アイ・スタジオまでご相談ください。施策実施についてのアドバイスなど状況を細かくヒアリングさせていただいたうえで経験豊富なマーケティングコンサルタントが、貴社に合った最適なマーケティング施策の提案から改善まで幅広くサポートいたします。
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