マーケティング施策を打つための羅針盤ともいえるペルソナの設定は、非常に重要な役割を担います。そこで本記事では、BtoBビジネスに特化した内容で、ペルソナ設定の重要性、ペルソナの作成手順のテンプレートをご紹介します。後半ではペルソナの活用方法や注意点まで網羅して解説しますので、これからBtoBマーケティングを始める方、ペルソナを作成したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ペルソナとは、マーケティングにおける自社サービス・商品を利用する典型的なユーザー像のことです。まずは、ペルソナの定義やターゲットとの違いについて詳しくみていきます。
ペルソナとは、自社の顧客像として「年齢、職業、住所、年収、趣味、ライフスタイル、家族構成」など、価値観まで踏み込んだ詳細なプロフィールを設計するマーケティング手法です。架空の消費者像を具体的にイメージすることで、ユーザー視点に立ったニーズや購買行動の分析、マーケティング施策の改善・最適化に活用します。
ペルソナとターゲットは、どちらも自社ユーザーを示す指標ですが、設定方法や絞り込むユーザー層が異なります。まず、ペルソナは自社が想定する「象徴的な仮想ユーザー像」です。ターゲットは、40代・女性・関東在住のような、自社がアプローチしたい「実在のユーザー層」を指します。どちらもマーケティング戦略には欠かせない指標となるため、ペルソナとターゲットの差を理解して正しく活用することが大切です。
BtoCでは「個人」をターゲットとするので、基本情報に加え、好きな番組や休日の過ごし方、趣味など、興味やパーソナルな要素を重視したペルソナを設定します。その一方で、BtoBは「企業や組織」をターゲットとするため、企業の情報収集担当者のペルソナに加え、業務課題や会社規模、決裁者や人数などの組織的ペルソナも考慮しなければなりません。BtoBとBtoCでは、顧客の購買行動や意思決定プロセスが大きく異なるため、混同しないように注意が必要です。
BtoBマーケティングを成果につなげるには、企業に複数いる意思決定者のニーズを正確に把握し、適切なアプローチを行うことが大切です。ここでは、ペルソナがなぜBtoBマーケティングにおいて役立つのか、そのメリットを詳しく解説します。
ペルソナを一人の代表的な人格として考えると、「いつ」「どんな場面で」「どのように」自社商品を使うのか、その行動やニーズを深掘りしやすくなります。顧客目線に立った自社分析を行うことで、ユーザーファーストの施策立案や、訴求力の高い商品企画に役立ちます。
ペルソナ設定の最大のメリットは、社内で思い描く顧客像を統一できることです。各部署でペルソナの課題や心理を共有できれば、認識のズレをなくしプロジェクトの検討もスムーズになります。こういったペルソナのイメージ統一には、氏名や顔写真をつけた人物像を共有する手法も有効です。
ペルソナを起点に自社分析を行うと、「購入コスト」「期待する機能」「サービス内容」など、競合と差別化すべき自社の強みを明確にできます。自社サービスやマーケティングの方向性が定まれば、ペルソナと似たターゲット層への市場優位性確立もスムーズです。
ペルソナ設定でアプローチの方針が明確になれば、効果的なマーケティング施策に絞って議論でき、結果的に無駄の削減や素早い意思決定につながります。たとえば、ペルソナの属性情報を参考に販売戦略やセグメンテーションを設定すれば、効率よく広告コストを削減可能です。
ペルソナ設定に取り組むにあたり、思い込みや先入観で的外れな人物像にならないよう、決まった手順やルールを守ることが大切です。ここでは、ペルソナの作成手順のテンプレートをご紹介します。
ステップ1:自社の商品やサービスを分析する |
ペルソナ設定では、まず顧客目線でみた自社の強みや市場価値を分析するところから始めます。市場におけるポジショニングを探る3C分析や、顧客の購買プロセスを分析する4C分析などのフレームワークを取り入れるのがおすすめです。 |
ステップ2:顧客データからターゲットを絞る |
自社分析の次は、社内にある既存顧客のデータを精査し、ペルソナ設定に必要なターゲット属性を絞り込みましょう。具体的には、直近半年以内のアクティブユーザーの属性や購買履歴をチェックしたり、Web解析やアクセス解析などを用いて、自社のメインターゲットとなるユーザーの情報を収集します。新規事業など既存顧客がいない場合、他社情報や公的な統計などの定量的な市場調査を参考にしてください。 |
ステップ3:既存顧客へのインタビューやアンケートの実施 |
ペルソナ設定にあたり不足する情報があれば、既存顧客へのインタビューやアンケートなど、定性的な調査の実施を行います。商品購入のきっかけや、使用感、満足・不満足のポイントなど、ユーザーの言葉を集めれば、よりリアルなペルソナ設定につながります。 |
ステップ4:ペルソナを設定する |
データ収集が終わったら、実際のペルソナを設定します。BtoBのペルソナは「企業に属する従業員」という視点で、下記の2つの項目を定義してください。
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なお、BtoBでは意思決定者や決裁者が複数関与するため、担当者の属性については、商品購入に関わる全員のペルソナを作成することが大切です。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品を認知してから購入までのプロセスを、一連の旅に例えたものです。顧客が「いつ、どのような思考で、どう行動したか」を時系列にまとめて可視化することで、アプローチの戦略立案や最適化に活用します。
ペルソナをカスタマージャーニーに活用すると、施策のタイミングや内容、訴求力のあるアプローチ方法、最適な広告媒体選択など、多くの顧客接点を具体化することができます。ペルソナは設定するだけでは宝の持ち腐れなので、カスタマージャーニーマップに落とし込み、マーケティング戦略立案の手がかりにすることが大切です。
最後に、ペルソナの作成で注意すべきポイントを解説します。
ペルソナ設定の精度を高めるためには、推論や仮説を避け、データに基づいて作成することが大切です。根拠が不正確だとその後の施策がすべて的外れになってしまうため、まずは正確で現実的なデータからペルソナの定義を行うようにします。
ペルソナ設定には詳細なユーザー像が求められますが、不要な情報を盛り込む必要はありません。相反する情報が必要な場合は別の人物として定義するなど、情報過多で人物像がぼやけないように気をつけてください。
ペルソナ設定は少人数で作業せず、チームメンバーや他部門も巻き込んだ大人数で考えることが重要です。関係者全員がイメージしやすく、納得できるペルソナ像を作成し、共有するようにしてください。
ユーザーをとりまく価値観や社会は常に変化しています。そのため、一度作ったペルソナは運用開始後も定期的にブラッシュアップし、見直していくことが大切です。
ペルソナの設定は、マーケティング施策をはじめるにあたって要となる重要な手法です。ペルソナ設定の意味や効果を理解し、自社サービスの発展へとつなげてください。
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