コラム

BtoBマーケティングとは? 流れや戦略の立て方など基本知識まとめ

作成者: 西村由香|8/16/23 6:13 AM

BtoBマーケティングでは企業相手の商談を行うため、顧客である企業やその担当者の特徴を深く理解して戦略立案を行うことが重要です。そこで本記事では、BtoBマーケティングを行ううえで知っておきたい基礎知識からBtoCとの違い、BtoBマーケティングの流れや施策、必要なツールなどを網羅的に解説します。

後半ではBtoBマーケティングを行うマーケターが必ず理解しておくべき成果を出すポイント3点も具体的に解説しますので、ぜひ最後までご一読ください。

BtoBマーケティングとは?

BtoBは企業間取引を指し、「Business to Business」の略称です。
BtoBマーケティングとは、企業が法人顧客に対して自社製品やサービスを提供するための販売活動や仕組みづくりのことを指します。

BtoBマーケティングが必要とされる背景

従来のBtoBビジネスでは飛び込み営業やテレアポなどプッシュ型の営業手法が主流であり、マーケティング活動にはあまり注力されてきませんでした。しかし、近年の市場環境ではプッシュ型の営業だけでは顧客の囲い込みが難しくなりつつあります。

その原因として、デジタル技術の進歩による購買プロセスの複雑化が関係しています。顧客はネット検索などを通じ、従来よりも多くの情報を手にすることができるようになりました。その結果、営業担当者を通さずに商品の比較検討をすることが容易となり、購買の主導権が顧客側へシフトしてきています。

このような状況下で、顧客のニーズや段階を踏まえてアプローチをしていくBtoBマーケティングは重要性を増しています。多くの企業がより効果的なマーケティング施策を模索し、成果を最大化するために積極的にマーケティングに取り組み始めています。

BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違い

BtoCは「Business to Consumer」の略称で、個人消費者をターゲットにしたビジネスモデルです。「個人」の消費者はターゲティングや購入目的が明確なので、ひとりのユーザーの購買意欲を高めるような感情に訴える施策を多く展開します。

一方、BtoBマーケティングでは企業など「組織」を対象とするため、購買目的が自社の課題解決や業務効率化となるような施策を展開します。また、製品の購買単価が高額なことや、複数の意思決定者を納得させる必要があること、検討期間が半年〜1年と長期化するケースが多いといった違いがあります。

BtoBマーケティング 5つのステップ

では、BtoBマーケティングとはどのように展開していくものでしょうか? 顧客の獲得から始まる5つのステップをご紹介します。

1.リードジェネレーション(見込み客の獲得)

自社商材に興味・関心がある見込み顧客(リード)の母体を増やすための集客活動のことです。ホワイトペーパーや展示会・ウェビナー開催などで顧客との接点を増やし、認知拡大のきっかけにします。リード獲得のための施策立案には、自社の顧客データの多角的な分析や、求めるペルソナ設定の明確化が重要です。

2.リードナーチャリング(見込み客の育成)

獲得した確度の低いリードの購買意欲を育てるためのプロセスです。メルマガ配信などコンテンツマーケティングによる啓蒙活動や、インサイドセールスで課題解決を継続支援するなど、顧客と定期的にコミュニケーションを続けることで信頼関係を強化します。ナーチャリング対象のリードのうち、確度の高いリードは全体のわずかしかいないことを意識し、根気よく継続的に施策を実施することが重要です。

3.リードクオリフィケーション(見込み客の選別)

ナーチャリング後にホットリードを選別するステップです。商談化見込みのある顧客をもれなくセールス部門へ引き継ぐことで、効率的な営業アプローチを実現します。ホットリードはスコアリングで測定し、メール開封1点、資料請求3点、問い合わせ5点などの加点方式で、一定点数を超えた顧客をリスト化するのが一般的です。

4.商談・受注の獲得

セールス部門はリードと商談を進め、受注へつなげます。商材や単価によって異なるものの、商談に至ったリードの受注率(受注件数/ 商談数)は10〜30%が平均的と言われています。受注率の向上のためには、商談に至るまでのリードの行動履歴(WEBサイトへの訪問やクリックしたメールの傾向、キャンペーンやウェビナーへの参加履歴など)の情報があれば、より早く的確な提案が可能となります。

5.継続利用の促進

売上向上のためにアップセルやクロスセルなど継続利用を促すアプローチを行います。アップセルでは上位モデルの自社商品提案、クロスセルは関連商品の同時購入をおすすめする手法です。また、サブスク形態のビジネスでは解約率を下げることが必須であり、そのために顧客の利用状況の把握や満足度向上にも注力しなければなりません。BtoBマーケティングでは、顧客の成功やメリット拡大を目標とする「カスタマーサクセス」をKPIのひとつとし、顧客と良好なコミュニケーションを取り続けることが大切です。

BtoBマーケティングで成果がでる戦略立案のポイント

BtoBマーケティングでは、効果的な戦略を立てるために理解しておくべきポイントが3つあります。施策を行う際は、先ほどの各ステップと合わせてこのポイントもおさえておきましょう。

市場と顧客への理解を深める

BtoBでは同じリードでも業種や役職ごとに属性や課題も異なるため、それぞれの市場トレンドや競合、ニーズ、自社の強みを的確に把握することが重要です。
ペルソナやカスタマージャーニーを用いて可視化した顧客データを根拠に、Webサイトに掲載すべき情報や、接点となるチャネル・媒体の選択、訴求力の高い広告制作などを行いましょう。競合他社の導入事例や成功事例などを調査し、同じ施策を打ってみるのも効果的です。

戦略を立て施策を実行する

もしBtoBで「成果が出ない、商談率が低い」という悩みを抱えている場合、多くはマーケティング戦略をうまく設計できていないことが原因です。そのような場合、ペルソナやカスタマージャーニーを振り返り、どのターゲットに向けたどんな施策を行うのが良いのかを改めて考えてみることがおすすめです。収集した顧客データに基づいたPDCAサイクルを構築し、各フェーズで正しい優先順位のもとで施策を実行できるよう現状を見直しましょう。

営業やマーケティングなど部門間の連携

顧客との関係性であるリレーションを良好に保つためにも、営業部門とマーケティング担当者の連携は欠かせません。受注率やLTV(顧客生涯価値)の高いリードの傾向や特徴などを部門間で共有することで、質のいい見込み客を増やし、利益向上につなげることが大切です。

 

BtoBマーケティングの主な施策

BtoBにおいて、マーケティング部門が担当するのは、主にリードジェネレーションとリードナーチャリングの施策です。さまざまなマーケティング手法があるので簡単に紹介していきます。

リードジェネレーション

リード創出や認知拡大のための情報発信や、問合せなどのきっかけづくりを行う施策です。

広告

広告は交通広告やCM、DMなどオフライン広告のほか、Googleのような検索エンジンに出向するリスティング広告、SNSやアプリなどに掲載するディスプレイ広告など様々です。顧客の特性を考え適切な出稿場所を選ぶ必要があります。

コンテンツSEO

ブログやオウンドメディアなどで情報発信を続け、特定のキーワードで検索エンジンからの集客を狙う手法です。顧客となるユーザにとって有益となる最適化したコンテンツを作成し、認知度のアップやファン層の確立を目指します。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーとは、自社製品や事例、ノウハウについての資料です。顧客が知りたい情報をピックアップしPDFなどにまとめ、メールアドレスや電話番号、名前などの個人情報を入力して、Webからダウンロードできる形式が主流です。

プレスリリース

メディア向けにサービス・商品情報をまとめた公式文書がプレスリリースです。信頼性の高いメディアに取り上げられることで、知名度や信頼性を高めることができます。

記事広告

Webニュースやブログなどのコンテンツに馴染む形式で、記事として商品を掲載する手法です。タイアップ広告やPR記事ともよばれ、読者に不快感を持たれずに商品の認知度を高めることができます。

リードナーチャリング

BtoBでは検討期間が長くなりやすいので、顧客企業の担当者との接触回数を増やし、CVR(コンバージョン率)向上に結びつけるため下記のような施策を実践していきます。

メールマーケティング

獲得したリードに対して、有益情報や自社商品の活用方法などを記載したメールを継続的に配信します。顧客との接点を増やすことで、サービスへの理解増進や最終的なホットリード化を狙います。

ウェビナー・セミナー

技術や知識が必要なサービスや仕様が複雑なツールなどを販売する場合は、法人向けのセミナー開催やイベント実施が有効です。近年では新型コロナウイルスの影響からオンラインのウェビナーも普及しています。サービスや商品自体を説明するものから、業界のノウハウを提供するものまで内容は様々です。顧客の購買意欲や認知度に応じてどんなセミナーが求められているか、ニーズを探っていくことが重要です。

BtoBマーケティングにはツールの活用が不可欠

BtoBのデジタルマーケティング施策を効率的に実施するには、ツールの導入が不可欠です。施策実行や効果測定を自動化したり、顧客データを一元管理できるので、事前に立てた戦略をもとに効果的にマーケティングを行うことができます。

MAツール

マーケティングオートメーション(MA)ツールは、デジタルマーケティング業務の自動化を可能にするツールです。リードの獲得から商談に至るまでをカバーし、顧客の検討段階やタイミングに合わせた施策を行うことで成約率の向上に寄与します。
具体的な機能としては、リード管理機能、スコアリング機能、シナリオ作成機能、メール作成・配信機能、ランディングページ(LP)やフォームの作成機能、レポーティング・分析機能などがあります。
MAの運用には、シナリオ設計、コンテンツ制作、分析・改善などの総合的な知識も必要となるので、導入や立ち上げ時にはプロの力を借りることをおすすめします。

SFA/CRM

カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)とセールスフォースオートメーション(SFA)は、どちらも営業活動を効率化するためのITツールです。CRMは顧客単位で情報を管理するのに対し、SFAは商談や案件単位で情報を管理します。
これらのツールを使うことで顧客の状況や案件の進捗管理、営業履歴を一元管理し、社内の営業効率や生産性向上を狙うことができます。また、アカウントベースドマーケティング(ABM)施策のような業界やターゲットを絞った対策も行いやすくなります。リードジェネレーションから商談化までのプロセスを段階ごとに可視化できるので、マーケティング活動のPDCAを回す効率化を図ることができます。

アナリティクス(分析)ツール

アナリティクスツールは、サイト内のユーザ行動を分析するためのツールで、アクセス解析やヒートマップなどが該当します。BtoBのデジタルマーケティングでは、データに基づいた分析が重要です。アナリティクスツールにより、サイト内のページ閲覧や滞在時間、クリック数などを分かりやすく可視化し、分析することができます。また、そのデータを広告運用やページ改修に活かし、CVRやCPAの効果を最大化していくことができます。

BtoBマーケティング戦略は顧客理解からはじまる

BtoBマーケティングでは、自社に合った戦略を立てるためにも、顧客理解を深めることが最重要です。自社の顧客データを精査し、良好な関係を築きながら成約につなげることができるよう、施策内容を検討しましょう。

失注を防ぐためにも、部門間の情報提供や連携を密にし、適切にフォローしていく運用体制づくりが求められます。もしBtoBマーケティング戦略や施策でお困りの方は、弊社株式会社博報堂アイ・スタジオまでご相談ください。経験豊富なマーケティングコンサルタントが、貴社に合った最適なマーケティング施策の提案から改善まで幅広くサポートいたします。

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